負担付死因贈与契約
贈与する人と、贈与を受ける人との合意内容を契約で交わすのが贈与契約です。そしてその効果が贈与した方が亡くなった後に生じるのが死因贈与契約です。契約は双方の合意で成立するものである以上、贈与した方が亡くなった後、その意向を放棄することが出来ないのが特徴です。
これに対して、遺言書はたとえ遺言執行者を付けたとしても、相続人全員が遺言書に反する内容で協議し、合意した場合は遺言内容といえども、無理矢理実行させることは出来ません。もし、意思を確実に実現したい場合は、死因贈与契約も有効と言えます。さらに「負担付」というのは、贈与をする方が、贈与を受ける方に、何らかの義務・負担を付加して贈与することです。
贈与を受けた方は、相続が発生するまで、その義務・負担を全うし、利益を受けるということになります。
負担付贈与の「負担」の部分を例に上げると
具体的には、“今後の身の回りの世話を続けて欲しい”“同居して面倒を見て欲しい”といったケースが多くみられます。遺言書よりも実行度合が強く、成年後見よりも自由度が高いという意味合いを含む制度になっています。
負担付死因贈与契約の注意点
死因贈与の手続きにおいて、注意をしなければならないのは、死後契約内容の実行の際に疑問が発生したり、相続人間でトラブルが発生した場合を想定して対処しておくことです。まずは契約内容を明確に記載しておくことが大切で、
① 贈与の対象資産
② 負担の内容
を明らかにしておくことが特に重要です。
資産が不動産の場合は、登記簿の記載に従って正確に記載しましょう。 対象の資産が番地違い、又は名義違いで、実は存在してなかったというケースも実際にありました。また、預貯金は「銀行名」「口座の種類・番号・名義人」を明示します。
死因贈与契約も遺言書と同様に、執行者を指名することが可能です。通常、死因贈与契約の内容は、他の相続人と利害が対立することが多いため、法律の専門家を指定しておけば、執行が確実に進められることでしょう。
負担付死因贈与契約に、公正証書を利用する
死因贈与契約というのは、一般的な贈与契約と同じ類のものであり、書面になっていない場合は、贈与をする方が撤回することが可能です。負担付贈与を受ける場合には、負担も負うわけですから、撤回されないために書面にしておくことが大切です。
ちなみに、死因贈与という言葉が法律上あるわけではありません。言葉としては定着していますが、一般的な贈与に「贈与者の死亡により、その効力が生じる」という条件合意が付いているものです。贈与契約書には公正証書を利用するのが最も安全かつ確実と言えるでしょう。
負担付死因贈与契約の取り消し
負担付死因贈与の取り消しについては、その負担が履行されたかどうかで、大きく違ってきます。まず、負担が履行されていない場合、遺贈の取り消しの規定が適用され、取り消すことが可能です。また、負担のない死因贈与契約の場合は、これもいつでも取り消すことが可能です。
しかし、負担が全部または一部履行された場合は、原則として取り消すことができません。 ただし、取り消すことがやむをえない「特段の事情」があれば、遺贈の規定が適用され、取り消すことができます。
死因贈与契約の特徴
死因贈与契約の特徴を端的に整理すると、
■ 贈与を受ける人との合意が必要
■ 契約とともに権利義務が発生するが、効力は贈与者の死亡後
■ 原則として取り消し・一方的な破棄は不可
となります。
遺言書における遺贈とは異なる法律行為です。贈与する方が亡くなった場合に、効力が発生するのですが、ご自身の財産を処分する行為ですので、贈与する方は意思を明確に伝えられるだけの認知能力が条件となります。書面がしっかり作成されていれば、贈与を受ける人も承諾しているため、遺贈よりも実行性に優れていると言われています。
ただし、遺言書と同じように、遺留分減殺請求の行使は受ける可能性があります。遺留分を考慮した設計が必要となるでしょう。