「本当の解決とは」~解決事例のご紹介に先立って~
私どもの事務所も令和4年で創立70年を迎えました。
「吉田さんとこは、昔からここに有るでね」「親の代からお世話になってます」など、
お客様からお声を頂くと、とてもありがたく、支えて下さいました皆様や、
解決後のお客様の満面の笑みを思い出し、感謝でいっぱいになります。
私どもで、お受けする案件は年間600件を超えておりますので、
解決事例もすぐに糸口が見えるものから、涙が止まらないドラマティックなものまで数限りなく様々です。
たくさんの解決事例をご案内したい所ではありますが、何しろ、守秘性の高い業務です。
お客様のご同意を頂きながら、少しずつご紹介していければ、と思っています。
そこで、解決事例ご紹介に先立って雑感を少し。
司法書士としてご相談をお受けする中で、本当の「解決」って、何だろう、と思うことがあります。
私共でお手伝いできることは、もちろん、精一杯させて頂くのですが、
その後、「この前のご家族、どうなさったのかな」と、振り返ることがよくあります。
最後、ちゃんと「気持ちの解決に至ったかな」と。
最近は特にですが、「相続放棄をしたい」とおっしゃる方が増えてきた様に思います。
亡くなった方(被相続人)が多くの借金などを残していた時に、そのマイナス財産を相続したくない、
という理由で、相続放棄をするのが、その典型です。
家庭裁判所で適法に相続放棄の手続きをすれば、法律上、相続人ではなくなりますから、
亡くなった方の財産は、プラスもマイナスも相続しないから、です。
ところが、故人の借金が理由ではなくて、疎遠になった家族や親族が亡くなった時、
その相続人となった方が、関わる事を避けたくて、相続放棄をするケースが増えているのが、
最近の傾向です。
少し具体的な例を挙げてみますね。
親子ではあるけれど、様々な理由で疎遠になって、
親が亡くなったことを近くの親族や行政機関から連絡を受けたりして初めて知った時。
「親のものを継ぐつもりがないから放棄したい」だとか。
又は兄が亡くなったので、よく調べてみると、兄には子供がいない。
両親は既に亡くなっているから、弟である自分がたった一人の相続人になることが分かった。
兄弟だけれど、交流もなく、兄の友人関係も全く分からない。
「何もわからないものを相続するのは不安だから放棄したい」だとか。
あるいは亡くなった長男には子(孫)がいたが、長男が離婚し元妻が孫を引き取ったため、
それ以降は孫との交流が途絶えた。孫が亡くなったと連絡を受けたが、孫は独身で子供がおらず、
当時引き取った元妻も亡くなっていたから、祖父母である自分たちが、孫の相続人となった。
「何もしてやれなかったのに相続する事にきが進まず、放棄したい」など。
亡くなった方の生前の生活状況がわからないと、どのような遺産があるのか、借金があるのか、
などが分かりづらく、相続することを躊躇(ちゅうちょ)したり、相続することのメリット・デメリットを
考えると、結果的に相続放棄を選択したりする方が増えているようです。
私たちを取り巻く社会環境は日々変化していますし、コロナ禍で更に会う機会も削がれてしまって、
家族だ、とか親族だとか言っても、交流もなく、疎遠になっていくことは仕方がない場合もありますが・・・こんな仕事をしていると、相談者の方々の身の上話を聞きながら、事案を解決した後に、切ない気持ちになる事があります。
解決の道筋は、もちろん、多様ですが、人との絆も、解決の一助になるかもしれません。
自分自身も、日常の色々に負けてここ数年、兄弟とも会えずにいます。コロナ禍の色々落ち着いたら、
実家の居間で、一杯やりながら、昔話がしたい今日この頃です。